幾つかの課題の兵庫への旅

2008.8.27〜28

 

その年の晩夏、思いを新たにする覚悟で私は兵庫に向かって旅に出た。
2008年の8月であった。
「ねえ、どうして旅に出るの」
「苦しいからさ」
「有給もう無いんでしょ」
「えっ!?」
男は有給休暇の残数なぞ気にしてはいけないのです。
とにもかくにも勇躍18切符にて西へと向かいました。
写真は美しい豊橋公会堂。関係ないか

西へ向かう列車は快適かつ快速にて温友との待ち合わせ駅アマには10時18分着。
どろどろした情念の町アマですが駅周辺は存外無機的で毎回がっかりします。
車谷先生が病死した鶏を串に刺して生計を立てていたのは阪神の駅の方なのでしょうか

アマから乗り換えて十数分。
あたりはすっかり深山の雰囲気です。
駅名は武田尾。
2008年の夏、温泉マニアの間では熱い視線が注がれていた場所のようです。

ひとまず今回の旅の目的であった仮設露天風呂は、当たり前のように駅至近にありました。
あたりには行き交う車も人も居ません。
こんな長閑の地で、こんな豪快の湯を見つけたならいったい衣類を脱ぐのに何の躊躇がいるでしょう
もとよりこれにはいるために浜松から来たのです

いやいや、これは満願です
湯は29℃だったか、寒すぎず茹だることもなく夏場には天国のような入浴体験になりました。
これはすばらしい。

「このゴミのコンテナは何と言うんですか?」
「バッカンコンテナゆうんや」
「なるほど、それではここは武田尾バッカンコンテナ露天風呂ですね」
「うむ。期間限定や」
私を案内してくだすった温友は私に幾つかの説明をしながらまんざらでもなさそうなお顔をなされた。

もういいですか

鉄の歌。
武田尾→アマ→明石
今回の旅は兵庫県を西へ東への大移動です。
楽しくて仕方ありません

明石の駅に降り立った私たちは若干の空腹を感じました。
「せっかくだから明石のたこ焼きでも食いませんか」
「明石ではそれは卵焼きゆうんや」
「なるほど、どっちでも佳いのですがついでにビールでも飲みますか」
「いや、まだ今日はこれから3個所温泉回るから我慢してください」
「はあ…」

明石焼き500円。
こんなお店が好きだ。
ビールは禁止せられたがそれでも佳かった。

写真ではあの美味さが全的に表現が難しいようです

ああ、また行きたい。
美味礼讃。
高速千円の余波で苦難のタコフェリーの支援に行くときには是非再訪したいものです

その後、山陽鉄道乗り換えて林崎松江海岸駅にて下車。
何という長い駅名でしょうか
名称から白砂青松の美しい海岸の駅を想像していたのですが実物は団地の前の普通の駅でした。
モダンを狙った三角の屋根がどちらかというとあまりよい趣味には思えませんでした

憧れの明石のえびす湯。
ここを思って幾星霜。
今回ようやく訪ねることが出来ました

高張性の食塩泉
ヤクルト色の源泉が佳い味だしています
私見ですがヤクルト色の湯はスカがあまりないような気がします
美しく浴感がよく、そうして行き交う人達の美しい明石の片田舎の銭湯
これは佳いです
やはりここも満願


次は明石大蔵海岸で下車。
数年前の夏、明石の花火大会で群衆の津波で圧死した人達の鎮魂の碑が事故現場となった歩道橋の一画にありました
こんな静かな海岸で阿鼻叫喚の人の津波が有ったなんて信じられないような…

事故のあった歩道橋から北を望みます。
薄曇りで六甲の山が見えません
いや、ここからだとこんなものなのかもしれません
神戸近辺に来て六甲の山が見えると襟を正すのがわたくしの個人的こだわりになっているのですが、この日は六甲は見えず、おまけに夏ゆえ襟のないTシャツ姿のため遙か六甲にはたいへん失礼してしまいました

あれに見えるは明石海峡大橋です。
はるかに淡路もみゆるぞ、さびしいぞ。
海岸線をそぞろ歩き。
男三人であるく明石の海岸も佳いものです。

「せっかくやからちょいとひっかけていこうやないか」
「御意」
もとより依存、いや異存のあるはずがございません
武田尾→明石えびす湯→明石大蔵海岸温泉
真夏に長距離を18切符で訪ね来て、充実の3湯。
なかなかどうして効きます。
腰が疲労感かんじます
早くゴロゴロしてビールでも飲みたいです

とはいえ、ひとたび湯に浸かれば探求心からか、あるいは義務感からか、よく判りませんがこうして湯を撮るのも一種哀しい性(さが)なのでしょうか
わたくしの極楽タオルと比してもけして負けない濃厚のオレンジの湯。
はるかに淡路を見ながらの入浴はなかなかどうして悪くありません

旅はいよいよ佳境です。
しっとりとくれた関西の夜。
とうとう大移動にてタイガーズの本拠地西宮まで来てしまいました。
この湯もあこがれ続けて幾数年。
クア武庫川。
名前は何だかハイカラですが内部はコテコテの析出物と濃厚の湯と濃密の関西銭湯。
もはや

いったいこれほどワイルドな銭湯が関東にあるでしょうか
凶暴な湯はへろへろの私に却ってカンフル剤となったようで、いまひとたびの元気を恢復したような気がします

その後、夙川の焼鳥屋で懇親会。
その後、灘の小料理屋、続いて民宿に移動懇親会続行。
ああ、こうして今年も神戸に遊ぶことが出来た。
これで夏も終わった。
それでよいのだ。


翌朝そぼ降る雨の灘の町で朝風呂を浴びて、帰路に向かいます。
腰痛悪化のため18切符をチケット屋で売り払い、不承不承新幹線での帰路となりました。
岡崎周辺のの豪雨で新幹線が遅れたのもよい思い出となりました
2008年の関西遠征はこうして終わりました

みなさん、ありがとう

 

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