この日の山陰はさながら厳冬。
雪とみぞれと青空とが代わる代わる顔を表し、凄まじい北風が常時吹き続けていました。
ある意味まさに共同湯びより。
冷えきった身体を湯舟にどぼんと沈め、窓からふっと薄日さす山陰の空を見上げました。
寒くて寂しくて何だかわくわくします。
「いいですねえ、ここの浴場」
私の言葉に、
「うん、でも腹が減ったなあ」
新田さんは既に次の行程の昼食を気にしておられた。
「鹿野温泉の近くに美味い蕎麦屋が在るんですよ」
「ほほう、それはいいですね。僕は盛り蕎麦の大だ」
「さあ、さっさと行こうじゃありませんか」
「御意」
楽しくてたまりません