気を取り直して温泉に入ると、これがまたひどく冷たい。暖かい湯を注入しておいて、夕食後あるいは夜半に入っても良いかとも思ったのですが、入浴時間にも厳正な決まりがあって遅い時間の入浴は(不可のようでした。
長いことかけてホースから湯を注入し、どうにか寒くない程度の入浴をしました。
お湯は単純泉の系統でしょうか、特段のものを感じることはできません。
ギシギシきしむ急な階段や、ガタピシの私の部屋や、和式女性用しかない2階のおトイレや、悪条件を言いだせばキリがないくらいの、なかなかどうして硬派のボロ宿でした。
翌朝帰りしな、同宿となった庄内から来た釣り人たちが、
「失礼ですがお宅たちはマニアなのですか」
「え、?」
「僕たちは釣りに使い勝手がいいから平気で泊まりますが、珍しいなと思って」
「あはは」
佐渡の朝は青く晴れて、旅館目の前の海岸線は美しい色合いで波静か。
「うむ、これでいいんだ」
私は小さくつぶやいて、こんな旅の一興を楽しく感じるのでした