熊入温泉


 熊入温泉 熊入温泉センター  

■施設名   熊入温泉センター
■値段    200円
■住所    山鹿市熊入町72
■電話    0968-44-5810
■時間    0700-2230
■定休    
■その他
■訪問日   2012/1/26 

泉質等失念 

肥後の薄暮は寒くて空気がピンと張りつめて、何だかわくわくしました。私たちは茜色に染まる空を追いかけるようにして熊入温泉センターにやってきました。
「もう今日はこのくらいで打ち止めでしょう」
「異議なし」
「ここをやっつけたら宿に入って早々に山鹿の街に繰り出しましょう」
「御意」

いったいに温泉が愉しいのか旅枕がうれしいのか、まだ見ぬ幾多の赤提灯が優先なのか…、 答えは友よ…
閑話休題
しかし熊入温泉には素直に感銘を受けました。
湯の素性の良さももちろんのことですが、人々の温かいまなざしこそが、この温泉の特性なのかも知れません。
湯は「乙女の湯」とも言われる優しい湯です。
無色透明無味無臭、いや、ほんのりと漂う硫黄臭は上質上品。
どばどばと注がれる湯が気持ちいいです。

夕刻とも有って、四角い深めの源泉槽の四囲ぐるりと肥後の荒くれ男たちが陣取っています。
ぬるめの湯ゆえ、みな一様に長湯の体勢です。
なるほど、これほどの柔らかで上質の湯なら長湯になるのも肯けます。
そんな荒くれ男の陣取る真ん中で、肥後のやんちゃ少年が独り湯舟で水泳をしていました。
少年は潜水を覚えたばかりなのでしょう、さかんに湯に潜っては顔を出し、四囲あちこちの男たちの周辺を泳ぎ回っておりました。
何度目かの潜水のあと少年が浮き上がったとき、もとより少年は潜水泳法の習得中ですからゆらゆら揺れる湯の流れによって、とある老爺の鼻先に浮き上がりました。
老爺は満面の笑みで少年の身体を支えます。
(ははあ、この小父さんの孫なのか、甘いおじいちゃんですな)
私はちょっぴり眉をひそめて少年の傍若無人を眺めていました。

ところが少年が次に浮き上がると今度は対角にいた老爺がまた満面の笑みで少年を迎えます。
次の潜水でもまた違うお父さんが満面の笑み。
ふと気づくと浴槽四囲をぐるりと取り囲む十数人のお父さんたちは、みな一様に笑って優しく少年を見守っているのです。
荒くれ男たちのおおらかな人間愛です。
男たちの素朴の優しさを熊入の共同浴場で識りました。

私は同じ湯舟につかりながら静かに感銘を受けました。
佳い光景を見たと思いました。
写真撮影も全不可でしたが、ちっとも惜しいと思いませんでした。

その夜の肥後焼酎が美味かったのはいうまでもありません

 

 

 

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