暮れなずむ桜島港から鹿児島市内へと戻る前に、道行くためにもう一湯。
もう一湯入ったらフェリーに乗るのだ。
桜島マグマ温泉は港の真ん前。
国民宿舎併設の、なかなかどうして強力な温泉です。
浴場にあまり情念は感じませんが、おおきな窓ガラスの向こうには鹿児島湾を隔てて鹿児島の街の灯りが見えます。
鹿児島の灯、海、振り返れば屹立する桜島の峰。
立地抜群、料金廉価。
そうして良質とよとみの湯も佳品。
赤茶けた塩味の湯は、王国鹿児島にあっても何ら恥じることのない実力湯です。
しばしじんわりと肌にしみいる高張性の湯を愉しみ、海の向こうの街の灯を眺めました。
「ゆっくりと入れたらいいんだけどなあ」
「御意」
外は冷たい2月の雨。
「桜島フェリーの立ち食いそばが美味いらしいですよ」
「おお」
若干未練は感じつつも、早いとこ鹿児島市内で一杯やりたくて、またフェリーの立ち食いソバにも惹かれて早々にマグマ温泉を辞したのでした。
補遺
フェリー甲板で強風の氷雨に濡れながら食べた立ち食いソバは、それはそれで思い出ふかいものとなったのでした。