まあ、そんな小さなことはどうでもいいくらいに変わらずに恐山の湯小屋はしびれるほどの風情と、うっとりするくらいの良質の温泉が満ち満ちています。
「どうです、いいところでせう」
「本当にいいですねえ」
かねがね私は今回の旅で同道したY君には恐山の素晴らしさを説いてきたので、今回Y君が素直に感心してくれたのでうれしくてたまりません。
「ぼくはね、この湯小屋で温泉に開眼したのだよ」
「おお!」
「独りじっとこの板張りに寝転んだり、湯に浸かったり半日もいたら、ずいぶんと瞑想ができる」
「……」
とまれ、恐山の湯小屋と白濁した硫化水素の湯は旅ごころをくすぐる日本屈指のエクセレントな場所であると改めて思った次第です。
死ぬるまでにもう一度くらい来られるかなあ…
いや、きっと来る、自身にそう言い聞かせて参拝路を巡ったのでした