目指すは秋田北部のまだ見ぬ温泉群
五城目の街から寄り道を繰り返しながら暫時14時方向に前進を続けます。
滑多羅温泉はその特異な土着的名称に惹かれてやってきたものの街道沿いの温泉宿は滅亡廃業、国破れて山河あり状態ゆえ、すこしく分け入ったところにある公的施設のお風呂で入浴をしました。
廃校になった学校跡といった趣の施設は公営でたしか林業保養施設といったような名称があった記憶がありますが、記憶茫漠につき定かではありません。
受付のお父さんは市役所を退官した嘱託職員と霊視。
受付周りに流れる演歌はお父さんの所持品のラジカセから館内に響きます。
お風呂は階段を上がって二階に、小さな浴場がひとつ。
無色透明無臭の湯が湯口からどぼどぼと供給せられています。
源泉温度が20度ですから加温、そうして浴場内にはカルキ臭顕著。
それでも、はるばるこうして五城目の山間に来て浸かる湯です。
窓の向こうに広がる秋田の美林を眺めて湯に浸かれば旅愁郷愁は早くも盛り上がること必定。
山菜採りのお父さんたちが狭い浴場でむきになって先体洗髪をしているので、浴場が小さいこともあり若干の窮屈感あり、。
おまけに密閉感の高い浴場空間でむんむんと暑い。
「うむ、まあ、これでもいいんだ」
私は力なく独り首肯します。
「秋田滑多羅の湯に入れたのだからな」
湯はたとい満足できるものでなかったとしても、この地この場所を歴訪できたことこそ珠玉。
次なる湯へとホップステップ。
楽しくてたまりません