受付フロント周りはやや雑然として、くたびれ感顕著。しかしながら温泉浴場は明るく広く天井は高く、お湯はあくまで清澄。
さらさらと流れる湯は加温循環ながら、注がれる湯はとよとみ、そうしてほぼ同量の湯が浴槽切れ込みからあふれて洗い場へと流れてゆきます。
「うむ、なかなかどうして惡くないじゃないか」
私は独り悦に入ってしばしゆっくりとぬるめの湯に身体を休めます。
朝から新幹線と飛行機とレンタカーでの移動を繰り返してやや疲れを感じてきます。温泉めぐりも楽じゃありません。
でも、こうして未知の土地に来て湯に入ったりぼんやりとしたり、風に吹かれたり。そんなことが楽しくてあちこちをうろつくんだなあ。
鮮度の良い無色透明無味無臭の湯は疲れた我が身体を溶融させてくれるようです。
「さあ、そろそろいこうか」
誰にともなくつぶやいて、湯から出でて次の湯へと向かいます。
この浴場にも(もう来ることはないかなあ…
ちょっぴりさみしくて振り返ると、そこにはさらさらと湯が溢れているだけ